家事や家族の世話などを日常的に行っている子ども」(厚生労働省HPより)
障害や病気のある家族に代わって、
幼いきょうだいを含めた家族の
世話や見守り、労働、家事、精神的なケアなどをしているために
自分自身の教育や心身を育むための時間を得られない子供が増えているそうです。
ヤングケアラーと呼ばれる存在は、
現在日本では中高生ではおよそ20人に1人の割合でいると言われており、
家族のケアや家事などのために当てられる時間はおよそ1日平均4時間
と試算されているそうです。
世界的に問題となっているものの
この分野では後進国である日本の現状を知っておくために
メモしておきたいと思いました。
ヤングケアラーの現状
日本ではまだまだ認知度の低いこの問題ですが、
海外ではイギリスがその支援について先進国とのこと。
とはいえ、30年も前からその対策をしているイギリスでも
支援につなげられているのは推定されているヤングケアラーの全体数からするとごくわずかということです。
10歳にも満たない年齢からケアを始めたというケースも少なくなく、
そんな小さな子が子どもらしくいられる時間を大きく奪われていると思うと
大きな問題であることは明白です。
ですが対象者が子供であるために、
それが改善すべき問題であること、
また、改善できる点もあることを本人が自覚していないため、
対象者を見つけ、状況を把握するための手段を構築することが大きな課題の一つとなっています。
現状、対象者の状況把握については、
発見や聞き取りの方法に関して
各対応機関や団体でそれぞれマニュアル化するなどしながら、
対象者を見逃さないように試行錯誤されています。
また、
『悩みなどを共有できる場としてヤングケアラー同士の交流の場を設ける』
『家庭訪問をして現状を確認し、必要であれば公的な支援策につなげる』
など、
先進国の例を参考にしながら
日本でも同じように対策に動く自治体や学校などが増えています。
ただ、優れた福祉国家の北欧諸国でさえもヤングケアラーの存在が確認されたり、
先進国イギリスでも支援につなげられているのが5%ほどとされているほど
このヤングケアラー問題解決はまだまだ発展途上のようです。
ヤングケアラー問題の解決が難しい理由
境界線がない
ヤングケアラーの仕事内容や程度は人によって異なります。
食事の準備、掃除、洗濯、兄弟の世話、見守り、親のトイレや入浴、
外出時の介助や付き添いが多いとされていますが、
親や祖父母の精神的なケアまでも行っているケースも少なくないよう。
ただ、仕事内容を一言で言っても程度や状況はそれぞれ。
一つとして同じケースがなく、
お手伝いや経験としての美談として見られたり、
実際に若い頃のケアの経験が生きたと感じる人もいるので
許容範囲や境界線がまるでない。
そのため本人が支援が必要であることを自覚していないケースも多く、
要介入の対象であるということに気づくことが難しいのです。
子どもから助けを求めることが難しい
一般的に、子どもの世界は大人に比べて狭いために、
当事者がその生活を当たり前で問題だと思っていないことが
ヤングケアラーを見つけにくくさせています。
もうひとつ。
家の状況を知られたくないという気持ちから
あえて隠そうとする子供も少なくないのです。
家族が隠したがるというケースもあるわけで、
そうなるとそもそも『誰かに訴えるべきではない』ということにも。
当事者になると、問題とする点や認識、意識について
大きな差が出てきてしまうのはどんな問題でもありますが、
この件に関しては、当事者が子供であり、
彼らの世界のほとんどを家族や同年代の子供が占めていることを忘れてはいけません。
子供の世界で育ちきっていない倫理感から起こる、
いじめの対象や奇異の目で見られること、それに対する恐怖や不安、劣等感を覚えること、これらの可能性が大人の世界と比べて大きくあるのです。
ヤングケアラー問題を改善する必要性
ヤングケアラー問題の放置は彼らが大人になったときに
彼らの子供が同じような環境に身をおくことも普通である
という認識となってしまう可能性も内包しています。
誰しも自分の育った環境が普通であり当たり前であるから。
私たちが見過ごしたままで彼らが大人にならざるを得ないことで、
同じ問題が連鎖してしまうかもしれないことを覚えておくべきなのです。
また、この問題は、
他の教育の問題にも通ずるところがあるのではないかと感じます。
例えば賛否両論ある支援学級。
「他と違う(障がい者)」というレッテルが家族や本人に負担になる点が
大きな論点の一つとなり、その存在自体が問題視されることもありますが、
大事なのは支援学級の存在の有無ではないはずです。
教育というのは、どんな境遇においても心身ともに元気に育っていけるための
知恵や心の強さ、考え方や捉え方、前を向く気持ちの持ち方なども含めて学べるように大人が導いてあげることが大事なのです。
多くの問題の根幹には、私たち大人が『全員が違って当たり前』で、助けを必要とする場面があるのは『全員同じ』であるという認識を持てていないことが大きいのではないかと感じます。
ヤングケアラー問題を減らすために必要なこと
少しでもこうした問題を減らすために必要なことは
まずは大人自身が学び考え、変わろうとする姿勢。
そしてみんな同じであることを伝え続けること。
自分や”自分にとっての普通”と違う人に対して向けてしまう奇異の目というのは、
大人でも制御できていない場面が当たり前のように見られることを思うと、
子供にとってはより制御が難しいことです。
それをコントロールしたり、意識を変えさせたりするのは、
学校のみならず、親や周りの大人の日頃の言動によるものが大きいのです。
大人がそれを理解し、子供に対しての責任を意識した上でみんな同じであることを伝え続けることで子供が大人を信用して助けを求めやすくなるのではないかと思います。
ヤングケアラー問題は数ある家庭問題、社会問題の一つに過ぎません。
大事なのは、この問題を通していろんな問題において、
お互いが助け合うというのが普通の社会であるということをみんなが理解し、
意識するよう発信を続けることなのかもしれません。
何らかの形でこういった問題に関わっていくために、その意識を忘れないようにしようと思った今日このごろです。
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